ワイナリー店舗ドイツ壁補修工事

山梨県の歴史あるワイナリーにて、伝統的なドイツ壁(ササラ仕上げ)補修工事を行いました。ドイツ壁は今や全国的にも希少な左官工法のひとつで、職人の高度な技術と長年の経験が求められます。本記事では、その歴史的背景・技術の特徴、今回の現場でのこだわりや職人エピソードまで詳しくご紹介します。

実は今回補修したこのワイナリーのドイツ壁は、私自身が左官職人になったばかりで、まだ修行中の頃に初めて本格的に携わった思い出の壁です。
当時は右も左も分からず、先輩方に教わりながら一生懸命ササラを振るっていた記憶が今も鮮明に残っています。長い年月を経て、今度は「自分自身の技術で、昔の自分の仕事を補修する」という、職人としては特別な経験となりました。昔自分がやった時のやり方をしっかり思い出しながら、できる限り元の壁と違和感のない自然な仕上がりを目指して作業しました。
“新旧のつなぎ目が分からない”“ずっと残したくなる壁”になるよう心を込めて取り組みました。
  • ■ ドイツ壁とは? - 日本独自の左官伝統技法
    「ドイツ壁」とは、竹製のササラ(ササラ棒)という道具を用い、柔らかなモルタルを壁面に勢いよく飛ばして独特のザラザラしたテクスチャーを生み出す、日本生まれの特殊な左官仕上げです。
    その起源は大正時代~昭和初期。ヨーロッパ建築ブームの中で日本独自に進化した工法で、
    “ドイツ壁”という呼称も、重厚感のある洋館のイメージから名付けられたもの。
    実際のドイツではこのような壁仕上げが一般的なわけではなく、日本の職人文化が生んだ和洋折衷の芸術的外壁です。
    竹製のササラを使うことで、刷毛やローラーでは再現できない荒々しさ・光と影のコントラスト・凹凸感が生まれ、
    一つひとつの動きや力加減が、壁そのものに“手仕事の痕跡”として刻まれます。
  • ■ ドイツ壁の魅力・価値・現代的意義
    ・唯一無二の重厚感・レトロ感・異国情緒
    どこかヨーロッパの古い建物を思わせる雰囲気と、温かみのある手触りが共存します。
    ・抜群の耐久性と補修のしやすさ
    厚塗りモルタルは耐久性が高く、年数を経ても部分的な補修で美観を取り戻せます。
    ・店舗・住宅・公共施設にも採用可能
    和洋問わず、存在感あるアクセントウォールやエントランス、外構デザインにも最適。
    ・希少性と職人の誇り
    施工できる職人が年々減少しており、“文化資産”としても価値が高まっています。
  • ・下地作り
    既存壁の劣化部分を補修・整形し、必要に応じて下地モルタルを打ち直します。
    ・モルタル調合
    元の壁に合わせてセメント・砂・混和剤などを配合し、色や粒子感も細かく調整。
    ・ササラ飛ばし(仕上げ)
    竹製ササラを用い、熟練の勘と経験で一発一発モルタルを壁面に打ち付けます。
    凹凸・模様・厚みを何度も調整し、既存の壁との違和感をなくすことが重要です。
  • ・最終調整
    乾燥後も表面の均し・色調整などを行い、オリジナルの味を残しつつ自然に仕上げます。

    補修の場合、既存壁の経年変化・色むら・質感を忠実に再現する必要があり、材料選びや仕上げの工程にも多くの経験が活きています。
    この“合わせ技”こそ、左官職人の真骨頂です。
  • ■ 仕上がり・お客様の声・今後への思い
    工事後は、ワイナリーのクラシカルな佇まいが一層引き立ち、壁面の重厚感や陰影も美しく蘇りました。
    スタッフやお客様からも「新しい部分がどこか分からない」「これでまた長く使えそう」と嬉しいお声をいただき、
    職人としてもやりがいと誇りを実感できる現場となりました。
    ドイツ壁は、単なる装飾や流行ではなく、
    **「日本の左官文化・職人魂を未来に受け継ぐための大切な技術」**だと改めて感じています。
  • ■ ドイツ壁の価値とヒラシマの技術力
    現在、こうした伝統技法を正確に再現できる職人は全国でもごくわずか。
    合同会社ヒラシマでは、こうした左官の文化・技術を守りつつ、
    現代の建築やデザインの要望にも柔軟に対応し、**“オンリーワンの空間づくり”**をサポートしています。

    ・歴史ある建物の外壁補修
    ・個性的な外観演出
    ・店舗や住宅のアクセントウォール

    など、伝統技法+現代ニーズに合わせた左官工事・補修・リフォームもお任せください。